[vol.11]さよならTOKYO、そして都民のわたし
『ripple letter』は、私たちを取り巻くあらゆる“関係性”に触れるニュースレターです。
何気ない日々の出来事や話題から想像を膨らませて、人と人、人と地域、人と社会の繋がりを感じられるストーリーや考察をお届けします。
Side Story
さよならTOKYO、そして都民のわたし
今夏、都民でなくなる━━つくばへ移住することを決めたのだ。
時流に乗って、オンライン前提の働き方へ完全にシフト。もう後退することはない。7年に及んだ都民の立場を返上し、新しい生活が始まる。
東京にきたのは2015年。NHK長野放送局から東京の社会部に異動したことがきっかけだ。
担当は汚職事件や詐欺、選挙違反を追いかける警視庁捜査2課だった。兵隊として、四谷(新宿区)の「緊急報道用住宅」に入った。格安でワンルームに住めるが、地震や北朝鮮のミサイル発射時には24時間いつでも、警察庁や警視庁に“出動”しなければならない。
自分が担当のときが一番ミサイル飛んでいた時期だった…しかもほとんど早朝である。四谷からタクシーで10分とかからず霞が関まで飛んで行けた。
出身も大学も関西のわたしにとって、「四谷」といえば塾の「四谷学院」ぐらいの知識しか本当になかったが、ご存じの通り、かなりハイソなエリアだった。「四ツ谷」と「四谷三丁目」、そして「曙橋」と3つの駅があり、もうどこにだって行ける。四ツ谷は山手線の円内の「おへそ」に位置する。まさに都心の中の都心。
おいしい飲食店も充実しており、治安もものすごくいい。新しいマンションが相次いでできている。経済的事情が許せば、将来は四谷にマンションを買いたいと本気で思っている。
四谷には、NHKを退職する2019年4月まで、つまり平成の終わりまで暮らした。さすがに結婚してワンルームを出て、広尾にあるNHKの社宅に引っ越すことになるだろうと思っていたが、ついぞその時は訪れなかった(笑)
転職に際し、九段下(千代田区)に引っ越した。オフィスが半蔵門にあったので、歩いて行けるようにするためだ。満員電車には乗らない。これが最優先事項だった。
千鳥ヶ淵の緑道を歩いて抜けての通勤。戦没者墓苑や英国大使館を通り、30分かからずオフィスに着く。音楽や英語を聞きながら、行き帰りの行程を楽しんでいた。
ところが、コロナで生活は一変。半蔵門まで歩いて通勤するために、バカ高い家賃を払って九段下に住んでいたのに、なんとオフィスに出勤する必要がないという!
…なんてことだ。おまけに千鳥ヶ淵の桜のライトアップは感染防止のため2年続けて中止。一度も綺麗な夜桜を見ることなく、九段下を去ることになるとは…。無念である。
千代田区は図書館が充実していたり、区役所のロビーでWiFi完備でリモートワークができたり、やはりお金がある自治体というかんじがした。コロナ特別給付金として、すべての国民に配られた10万円とは別に、千代田区民には区から独自に12万円が配られた(これはかなりうれしかった)。
余談だが、靖国神社に押し寄せる右翼の街宣車のラッパの音で起こされることもあり、今でも気づくと口ずさんでしまうという後遺症も抱えた(笑)
九段下も四谷と同じくワンルーム。テレワークに飽きてからは、全国各地を気まぐれに転々として、食や風景、出会いを楽しんだ。しかし、住民票は千代田区に置いたままだった。
そうして、いよいよ籍を抜く。
つくば市民になるのだ。なぜかみんな茨城県民とは言わず、つくば市民と言う(笑)。神奈川と横浜、兵庫と神戸なんかもそうか。
さて、なぜわたしが移住先として、つくばを選んだのか。つくばはなぜ、熊谷との最終選考で勝ち残ったのか。この続きは次回に筆を預けることにしよう。
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