[vol.17]あの日思い描いた東京五輪を、疎開先の東北で
『ripple letter』は、私たちを取り巻くあらゆる“関係性”に触れるニュースレターです。
何気ない日々の出来事や話題から想像を膨らませて、人と人、人と地域、人と社会の繋がりを感じられるストーリーや考察をお届けします。と言いながら、やっぱり今回は東京五輪について。
*編集部がゆるやかに夏休みに入ってしまい、1ヶ月ぶりの配信となりました…🍉🏝
Side Story
あの日思い描いた東京五輪を、疎開先の東北で
76回目の「原爆の日」の夜に、岩手でこれを書いている。去年の今ごろは本業の合間を見つけて広島に行き、Forbesに2本の記事を書いた。あれから一年。コロナ禍はますます深刻になっている。
夏のはじまりから慌ただしく、この『ripple letter』もわたしが止めてしまっていた。
5人きょうだいのいちばん上の兄が死んだ。母と兄がクリスチャンのため、葬儀は地元大阪の小さな教会で行われた。コロナ禍の葬儀。参列できない人たちのために、妹が「LINEミーティング」で葬儀を生中継していたのが「おー、今っぽいな」と妙におかしかった。
かくいうわたしも、なんとなく大阪に帰らず、葬儀を欠席する不義理を犯した。理由はコロナ禍か、多忙か。ひとまわり上の兄から「今やるべきことをやれ。葬儀に駆け付ける新幹線の往復代で本でも買え」と言われるだろうと勝手に解釈した。
一昨年に実家の愛犬が死んだ。兄も亡くなり、いよいよ母一人の生活が始まった。わたしはと言えば、兄の死を知らせる夜明け前のLINEに「わかった」と返信したのが最後。なんとなく何も連絡できないでいる親不孝者だ。
・・・
Twitterに「五輪期間中は東京圏を離れる」旨、つぶやいた。するとフジテレビのある番組のディレクターからダイレクトメールが届いた。「五輪疎開する人を取材しています。お話を聞かせてもらえませんか?」。五輪疎開という言葉に違和感があったが、自分もNHKで勤務していた時に、こうした取材依頼をしていた立場だったし、おもしろそうだったのでOKした。
Zoomで取材に応じたインタビュー動画が全国放送で流れた。今この状況で東京オリンピックを開催することには反対で静かな抵抗として東京にいたくないこと、東京は感染爆発の懸念があること(残念だが当たってしまった…)などを話した。
実名・顔出しのため、炎上対策で、PCR検査で陰性を確認して東京を離れることや、“疎開先”では知り合いが経営する飲食店以外には立ち入らないことも話した。
震災関連の取材で訪れて気に入った岩手をはじめ、複数の地方で五輪疎開(?)するつもりだ。実際、気分転換の散歩もかねて近くのドラッグストアに買い物に行く以外は、外出していない。毎日、日が沈んで暑さがましになった時間帯に、店で無料のアルカリイオン水を組みに行き、美味しいコーヒーを淹れるのが楽しみになっている。
2019年4月30日、平成の終わりとともにNHKを辞めた時の最後の持ち場は東京都庁だった。残っていたら、間違いなく東京オリンピックの取材の最前線にいたはずだ。そして五輪後にもう一度、地方に異動していただろう。
そういえば「辞めたいと思います」と部長の携帯を鳴らし、都庁の隣の京王プラザホテルのカフェに慌てて駆けつけた部長からも「東京オリンピックがあるから都庁に配置したんだ。気に入らなかったか?」と言われた(ちなみにこの時、2人とも初めてナシゴレンを食べた)。
わたしは今、疎開先の岩手から東京五輪を冷めた目で見つめている。今日も明日も、ドラッグストアに無料のアルカリイオン水を汲みに行き、静かに美味しいコーヒーを淹れるのだ。
Our Interest
東京五輪の「レガシー」をさがして
開会式の前日に、演出ディレクターが過去のコントが理由で解任されるなど、信じられないぐらい色々起きる東京五輪。大幅に縮小・変更となった開会式も賛否両論を呼んだ。その翌日に公開された一本の記事が広く共感を集めた。
五輪をめぐるあらゆる問題の根底に潜むものを冷静に総括している。わたしたちは長く続いた「日本のおじさん社会」と決別できるか。そこにアフター五輪の真の意味でのレガシーがある。「価値観のアップデートが必要」なんて言葉はもう聞き飽きた。変わらなければ、終わる。それだけだ。
2021/7/24 note(安川新一郎)
モヤッとする翌日、東京オリンピック2020開会式が露呈したもの、僕たちはそれらを噛み締めて前を向いていかないといけない。
たった5分間で思い知らされたこと
開会式の演出案をめぐり、さまざまな情報が日々飛び交っていた。そこで明らかにされた経緯を目で追っていくとズシンと体に重りが乗ったような気持ちになる。
本来 自分に訪れるチャンスだったか否かは起きた現実の前には意味があまりない。ただ単純に、パフォーマンスで魅せることの力強さを思い知らされることになった。
2021/8/4 NHK WEB
ピクトグラム “中の人” が語ったこと 五輪 開会式