[vol.13]弁天池コミュニティのB面を見た
『ripple letter』は、私たちを取り巻くあらゆる“関係性”に触れるニュースレターです。
何気ない日々の出来事や話題から想像を膨らませて、人と人、人と地域、人と社会の繋がりを感じられるストーリーや考察をお届けします。
Side Story
弁天池コミュニティのB面を見た
あらかじめお断りしておくが、これは何かしらのオピニオンでもなんでもなく、ただわたしが途方に暮れているという話である。
わたしも現代人としてSNSのアカウントをいくつかもっているが、デジタルネイティブじゃない、それどころか悪名高いLINEおじさんと同世代である自分は、その運用が果たして適切なのかどうか常に心もとない。基本的にはどうでもいいことを一生懸命やるというのを信条に、Facebookは同好の士さがし、Instagramでは好きなもの、つまりおいしい食べものとすきな映画と本とねこの集積のために更新している。正解はなく素晴らしい投稿ができているとも思わないが、ともかく自分なりに納得してやっている。ひるがえって何を書き込んだらいいのかほとほとわからんとなるのがTwitterである。
Twitterという大海原に漂っているあれこれは、あまりに生身、あまりにむき出しだ。ニュースや知識、面白ネタ、感動話、かわいい動物、ちょっとしたあるいは壮大なオピニオン、そしてヘイト。こんなところにちっぽけなスポイトで一滴、二滴と何かをたらしたところで、世界はもちろんわたし自身にも何か意味のある波紋が生じるとはとても思えない。昼休みの校庭で繰り広げられるどの遊びにも馴染める気がせず片隅で立ち尽くす子どもの自分の姿を思い出すようだ。
そして身近なところで炎上など起きようものなら、当事者でもないのにじりじりと背中をあぶられ、痛く切ない思いをする。Twitterは見も知らぬ人の感情を受け取り増幅させる機関だと感じる。おもしろいつぶやきを見つければ、世界に埋もれていた天才を発見した喜びを分かち合いたいと思い、なにかを糾弾するつぶやきを見つければ、なるほどそんなひどいことがと義憤を呼び起こされてこれは意見を表明せねばと思う。あまりにも反射的にそれがおこなわれるため、じぶんがほんとうにそんなことを考えていたのかすらわからないままに感情が動いてしまう。コロナ禍でコミュニケーションが身体性を失い、のっぺりと色薄くなっていくなかで、余計に感情の増幅が加速し、疲れ果てていくのだ。
そんなに気負わず気楽にやりたまえと言われるかもしれないが、どうでもいいことを一生懸命やりたい性分のわたしは気軽にすいすいと泳ぎ出すこともできず、立ち尽くしている。
わが家の近所には、鬱蒼とした小山のような公園があり、そのふもとにある小さなため池・弁天池に毎朝あつまってくるおじいさんたちがいる。彼らはおそらく定年などで長い勤めを終えたいわゆるご隠居であり、ベンチに座り日光浴をする、弁天池に釣り糸を垂れ判然としない何かを釣る、毎年やってくるカルガモの親子を慈愛の目で見守るなどして日中を過ごしているようだ。このうえなくリアルな世界で過ごしている人たち。と思っていたのだが違っていた。ある日知人の中学生の息子がこの公園で犬に噛まれ、飼い主はその場で応急処置はしたものの彼の家にしかるべき報告や謝罪もせず立ち去ったという事件があった。その場では動揺して何もできなかった子に代わり、親が警察に届け出をして公園にも聞き込みに回った。もれなく弁天池のほとりのおじいさんにも目撃談を尋ねたところ「おっ。そんなことがあったのか。よしわかったTwitterにも上げとくからよ!」と請け合ってくれたのだという。なんということだ、リアルとオンラインのハイブリッドでコミュニティを形成している先達がこんなところにいたとは。くやしい。わたしもこの弁天池コミュニティに入りたい。
Our Interest
つながりって、何?
そう聞かれると答えには少し困ってしまう。SNSでフォローし合っているだけでは、本当のつながりとは言いづらい。でも、そういう人たちの方がレスポンスは早いし、コミュニケーション量も多い。おそらく、やり取りする頻度ではなく相手のことが頭に浮かぶ時間の総量こそがつながりなのではないかと思う。
記事中に出てくる、「むしろアルバムを作ったりライブで歌ったりすることが、何より強いつながり」という言葉に、アーティストとしての強さを感じた。
2021/5/18 Asahi Shimbun Degital Magazine[and]
「逆に聞きたい。つながりって何?」 Cocco、想像力が入る余地のない世界への警鐘
広く浅い人間関係のススメ
先の記事でそんな事を書いておきながら真逆のような内容だが、そもそも人間関係は“人生を健やかに生きるための要素のひとつ”だ。つながらなくてはならないという事はなく、自分に適した距離感や関係性を作ろうとする姿勢こそが大切だ。
2021/5/27 VOGUE
「広く浅いつながりだって、虚しくなんてない」──友人との距離感について。【西加奈子が選ぶ12冊の処方箋 ポッドキャストVol.2】
シェアが広げる作品の世界
自分自身、映像作品はもはやサブスクでしか観ないが、そんななかで、地上波で映画を放映する意味について。名作との偶然の出会いを楽しみ、大勢の人と感想を交わす。自分の中にあるものだけじゃ飽きてしまうから、そんなふうに世界が広がっていくのは楽しい。
2021/5/28 MANTANWEB
金曜ロードショー:「サブスク時代に名作放送」の理由、リクエスト企画の経緯...番組Pに聞く
個人情報との快適な付き合い方
アプリを跨いだトラッキングにユーザーの明示的な許可が必要になったことで広告価格が暴落してるとの噂、だそうだ。たしかにお土産に芋けんぴをもらってうまいうまいと食べていただけでFacebookに芋けんぴの広告が出てくるようになると、さすがにもう勘弁してくれよとうんざりする。広告は不要だとは思わないがどんな仕組みが必要なのだろうか。
2021/5/26 Engadget 日本版
iOS 14.5のアプリ追跡制限によりネット広告価格が暴落しているとの噂